「体験」が顧客を動かす時代へ
イベント業界では今、どのようなトレンドが注目されていますか?
小島
最近は、参加者がただ鑑賞するだけでなく、自ら体験できるイベントが増えてきました。イベントは、まさに体験を提供するフェーズに移行し、その体験を通してファンを獲得する仕組み作りが生まれてきていると感じます。
TAKA
まさに「体験」がキーワードになってきていますよね。派手な演出だけでは、観客は簡単に感動してくれなくなりましたから。
工藤
オンラインとリアルの融合も大きな流れですよね。コロナ禍で一気に普及したオンラインイベントですが、状況が落ち着いてきた今ではリアルイベントも復活し、両方を組み合わせた「ハイブリッド型」が増えています。オンラインイベントの普及によって、遠方の方でも気軽にイベントに参加できるようになり、イベントがより身近なものになったと感じます。
藤田
コロナ禍で普及したといえば、イベント運営のシステムも進化しました。QRコードをかざして入場するなど、非接触型のシステムが導入され、運営の効率化が進んでいます。例えば、入場受付のスタッフを大幅に削減することが可能になりました。
最新技術で進化する顧客体験
イベント業界において、どのような課題があるのでしょうか?
TAKA
率直に言うと、お客さんの目が肥えてきていると感じます。街中を見渡せば、東京都庁のプロジェクションマッピングや、新宿アルタの3D猫など、臨場感あふれる映像表現をよく見るようになりましたよね。しかし、いくら最新技術を駆使したプロジェクションマッピングでも、「またか」と思われてしまう時代。ありきたりな企画では、顧客の心を動かすことは難しいでしょう。
小島
本当にその通りですね。私たちも常に「いかにお客さんの心を揺さぶり、感動させられるか」を追求しています。イベントの企画段階から、顧客の期待を上回るような新鮮な驚きと感動を提供できるよう、徹底的にアイデアを練り込んでいます。
TAKA
会場に足を踏み入れた瞬間からイベントの世界観に没入できるような空間演出も重要ですね。五感を刺激するような仕掛けや、インタラクティブなコンテンツを取り入れるなど、観客の心を動かすエッセンスをどれだけ注入できるかが肝になってきます。
そのための手段の一つが、XRやVR、ARといった最新技術の活用ということでしょうか?
TAKA
その通りです。しかし現状ではあくまで補足的な役割が多い印象です。
小島
そうですね。最新技術を主役としてイベントを制作するのではなく、プラスアルファの演出として効果的に活用する。それによって、顧客体験により「驚き」や「没入感」などを演出することができます。
TAKA
技術にお金をかければいいということでもありません。大事なことは、イベントの目的に合わせ、最大限の感動を生み出すために何が一番効果的なのかを考えることでしょう。
ハイエストクルーでは、映像技術を活用してどんなイベントを開催してきたのでしょうか?
小島
以前、朗読劇で紗幕という薄い布を使った演出をしたことがあります。
TAKA
ステージ上にいる人物の前に紗幕を1枚垂らして、そこに映像を投影するんです。布の内側が暗くなっていれば映像は見えるのですが、中にいる人物は見えない。反対に中にいる人に対して明かりを当てると人物が見えるようになる仕掛けです。
小島
私はそれを見た時に、めちゃくちゃかっこいいなと思ったんですよね。臨場感があることで声優さんの感情表現がより際立ち、観客を物語の世界に深く引き込んでいました。アーカイブ配信の売れ行きも非常に好調で、お客さんの満足度も高かったと感じています。
多様な個性を持つチームだからこそ生み出せる価値
参加者の満足度を高めるために、ハイエストクルーならではの強みを教えてください。
小島
所属の異なる多様なメンバーが集まり、チームを結成していることです。各メンバーは異なるバックグラウンドで経験を積み上げてきた精鋭ばかり。さまざまな環境で求められている価値をすくいあげ、それをチーム全体で共有することによって、多角的な視点から顧客のニーズに最適な企画を提案できるんです。
工藤
私も同じことを感じています。集まっているメンバーは、活動の場やポジションもそれぞれ。だからこそ、さまざまな視点からの気づきが生まれてくるんですよね。
小島
TAKAさんはBtoCイベントも行政の仕事も手がけていますし、藤田さんは大規模イベントの運営経験が豊富なので、どんなイベントでも運営ディレクターとして、イベントに欠かせないスタッフの総指揮を安心してお任せすることができます。
藤田
私は参加者にとって安心で安全な導線を計画したり、オペレーションを全員で共有して、イベントの入場から終了までをスムーズに進行できるようにマネジメントしています。
これまでには1日に数万人が訪れるオペレーションから、企業式典やセミナーまで幅広く対応してきたので、クライアントが本業に集中できる環境を作りあげることは任せてください。
これまでには1日に数万人が訪れるオペレーションから、企業式典やセミナーまで幅広く対応してきたので、クライアントが本業に集中できる環境を作りあげることは任せてください。
小島
工藤さんはAPでありながらカメラマンの経験もありますしね。
工藤
はい。カメラマンの経験があることで、リアルとオンラインでの見え方にどのような違いがあるか気づけることは、APでもとても役立っています。
ハイブリッドイベントでは、オンラインとリアルは全く同じ見え方をする必要はないと思っていて。配信画面上ではモニターをいくつも作ることができたり画面構成を工夫したりと、配信で見るからこその楽しさを作ることもできます。
ハイブリッドイベントでは、オンラインとリアルは全く同じ見え方をする必要はないと思っていて。配信画面上ではモニターをいくつも作ることができたり画面構成を工夫したりと、配信で見るからこその楽しさを作ることもできます。
小島
TAKAさんと一緒に手掛けた『ゴールデンカムイ』のイベントもハイブリッドで開催しましたが、オンラインでの評判もとてもよかったですよね。通常は参加者と同じ目線をカメラで捉えて配信することが多いのですが、その時は参加者とは違う目線で撮影して、配信でしか見られない映像をお届けしました。
キャストは1F席から3F席まで使用して登場する演出を組みましたが、その際の出演者を抜くカメラのズーム操作やカメラポジションを工夫して、会場に参加した人が後に配信を見ても、また新しいイベントを見ている感覚になるようにしたんです。
実際に配信チケットの購入数もイベント終了後から一気に伸びていて、成功に繋がったと感じましたね。
キャストは1F席から3F席まで使用して登場する演出を組みましたが、その際の出演者を抜くカメラのズーム操作やカメラポジションを工夫して、会場に参加した人が後に配信を見ても、また新しいイベントを見ている感覚になるようにしたんです。
実際に配信チケットの購入数もイベント終了後から一気に伸びていて、成功に繋がったと感じましたね。
藤田
まさに、さまざまな角度から来場者や視聴者にとって何が一番いいのかを考えながら作っていけるところが私たちの強みですね。
TAKA
それと、私たちが最も大切にしていることは「参加者ファースト」。いかにお客さんに満足して帰ってもらえるかということを突き詰めています。
小島
そのためにアンケートを通して参加者の満足度の低かったポイントをリサーチし、次回のイベントに活かすことはもちろん、空間作りも常に改善を意識しています。
先ほどお話しした『ゴールデンカムイ』のイベントでは、参加者に作品を最大限に体感してもらうために、イベント会場に足を踏み入れた瞬間から世界観を感じられるように空間の演出をしました。
作品テーマをモチーフにしたスタッフ衣装を用意したり、ロビーには木材を使用したビジュアルを掲げたり、キャラクターごとに制作した大型バナーを2階から吊り下げて圧倒的な破壊力を持たせたりと、他には無い空間設計で最初から最後まで参加者が作品を堪能できる仕掛けを施しましたね。
イベントを主催する企業様にとっては、ROI(投資利益率)の向上が重要になります。
そのためには、参加者の満足度を高めリピーターになってもらう、つまりLTV(顧客生涯価値)を高めることが重要なんです。顧客の目的を達成するために、私たちは徹底した参加者ファーストの姿勢を持っています。
先ほどお話しした『ゴールデンカムイ』のイベントでは、参加者に作品を最大限に体感してもらうために、イベント会場に足を踏み入れた瞬間から世界観を感じられるように空間の演出をしました。
作品テーマをモチーフにしたスタッフ衣装を用意したり、ロビーには木材を使用したビジュアルを掲げたり、キャラクターごとに制作した大型バナーを2階から吊り下げて圧倒的な破壊力を持たせたりと、他には無い空間設計で最初から最後まで参加者が作品を堪能できる仕掛けを施しましたね。
イベントを主催する企業様にとっては、ROI(投資利益率)の向上が重要になります。
そのためには、参加者の満足度を高めリピーターになってもらう、つまりLTV(顧客生涯価値)を高めることが重要なんです。顧客の目的を達成するために、私たちは徹底した参加者ファーストの姿勢を持っています。
地域や世界を舞台に感動を届けたい
最後に、これから挑戦していきたいことを教えてください。
工藤
ハイブリッド開催が増えてきているので、イベント中のリアルタイムフィードバックも、もっと積極的に活用していきたいですね。オンライン参加者からのコメントをリアルタイムで収集・分析することで、イベント内容をその場で調整したり、よりインタラクティブな企画を生み出したりすることが可能になると思います。
イベントグッズの販売方法にも、もっとイノベーションを起こせると思っています。会場でしか買えない限定グッズは購買意欲を高めますが、一方で不満に繋がってしまうこともあります。グッズ購入のために開場の何時間も前から並んだり、購入できずにがっかりした気持ちでイベントに参加することになってしまったり……。
そこをデジタルを活用することによって改善できるのではないかと考えています。例えば、QRコードを読み取ってARを表示させるデジタルグッズなど。今ある技術を活かして、今までにないグッズ体験ができるんじゃないかなと思うんですよね。
イベントグッズの販売方法にも、もっとイノベーションを起こせると思っています。会場でしか買えない限定グッズは購買意欲を高めますが、一方で不満に繋がってしまうこともあります。グッズ購入のために開場の何時間も前から並んだり、購入できずにがっかりした気持ちでイベントに参加することになってしまったり……。
そこをデジタルを活用することによって改善できるのではないかと考えています。例えば、QRコードを読み取ってARを表示させるデジタルグッズなど。今ある技術を活かして、今までにないグッズ体験ができるんじゃないかなと思うんですよね。
小島
そのアイデア、すごくいいですね!私も最近NFTの勉強をしたりして、グッズの新しいあり方というのを最近考えていたところなんです。
TAKA
業界全体で考えると、海外ともっと近くなる必要があるように思いますね。今や、インターネットを通じて世界中とつながれる時代です。しかし、イベント業界において海外との距離はまだあまり縮まっていないと感じています。海外向けの配信や中継などできることはたくさんあるはず。日本のアニメは、海外でも大人気ですが、海外に向けての配信はまだまだ少ないですよね。
小島
確かに、海外市場でのニーズは感じています。東京ゲームショウでは、海外向けにいろんな施策を打ち出したところ、外国人向けの来場者受付では恐ろしいぐらい行列ができてましたから。年々、海外からの来場者率というのは上がってきていますね。
TAKA
マーケットがあり、提供するハードルも以前に比べ低くなっているのに、まだあまり目が向けられていないという現状はとてももったいないと感じています。
小島
海外に対してすごく壁が高いと思っているかもしれませんが、イベントはその壁を乗り越えられるんじゃないか、チャレンジしていく必要があるんだと思っています。目指すべき展望は日本を代表するような自主興行を自分たちで打つこと。それはハイエストクルーの目標の1つです。
TAKA
また、町おこしにもイベントは大きく貢献できると考えています。地域の魅力を発掘し、イベントを通して発信することで、地域活性化に繋げたいですね。青森のねぶた祭りのように、各地域それぞれに突出したイベントがあると面白いのではと思っています。
小島
地域独自の文化や魅力を掘り起こし、イベントにすることで活性化につながっていく。私たちはさまざまなイベントや最新の映像技術など、常に多くの情報や体験に触れています。私たちの知見と地域独自の文化や魅力を掛け合わせることで、地域の活性化にも挑戦していきたいですね。